← All books

image-left 骨董好きの著者が掘り出し物というイメージに踊らされてあちこちの骨董商を右往左往する様子が生き生きと描かれ、読んでいるうちに自分もその場にいて一緒に一喜一憂している気持ちになってくる。とくに三稿にわたって評価が急転する李朝白磁ツボのくだりは、骨董趣味の心理をよく表現していると感じる。

その一方で650万円をポンと出して良寛の古筆(真筆かは結局わからずじまい)を買ったり、偽物の酒器にあわせて700万円使っていたエピソードなど、いまは考えられないバブリーさもまた面白い。タイトルは持参した徳利を前に白洲正子に言われた一言ということで、在りし日の骨董好きコミュニティの様子も垣間見える。サラッと読める一冊。